初めまして。三代目角丸日比野宏紀です。
この名古屋で八十年以上、皆様にごひいきいただいている、うどん屋の三代目です。
みそ煮込みうどんを皆様にお褒めいただいて、
それを看板に毎日がんばっております。
当サイトでは、私の考えていることをお伝えします。
お付き合いくだされば幸いです。
角丸はマスコミに取り上げられることも多いのですが、
間違った内容の記事を掲載されて閉口したことが一度や二度ではありません。
それならば、記事にアドレスを記載していただいて、
直接私どもから角丸のご案内をしたい、という思いからはじまったこのHPです。
最初はとてもシンプルでしたが
(今でも充分拙いHPですが)
皆様のリクエストにお答えしているうち、
だんだんと広がりを見せてきています。
皆様のご意見をお待ちしています。
うどんの打ち方、みそ煮込みに関する疑問など、
ホームページで開示して欲しい情報がありましたら、何なりと、おっしゃって下さい。
メールをお待ちしております。
「こだわりの店」っていうのがブームみたいです。
私は個人的に、「こだわり」って言葉が好きじゃありません。
何かにとりつかれていそうで。頭がかたそうで。
そもそも「こだわり」って、お客様サイドのものじゃないでしょうか?
「僕はうどんはこの店と決めているんだ」というようなこだわりとか。
うどん屋がうまいうどんを作るために努力するのは当り前です。
誰だって、自分の仕事を一生懸命やらないと、食いっぱぐれてしまいます。
うまいうどんをこしらえるために、粉のいいものを選ぶのは当然です。
水は温度管理して、塩はミネラル分の多いものを使う。
そのほうがうまいうどんができるから、私はそうします。
うどん屋がうまいうどんを作るために努力するのは当り前。
そんな当り前のことを、えらそうに自慢するべきではない、そう考えます。
第一、うどんは大衆食。
気軽に、安く、おなかいっぱい食べられるのがいいところです。
「こだわっ」て、高価な食材をそろえる事ばかりが能ではありません。
例えば、みそ煮込みに入れるかしわに、名古屋コーチンを使うとします。
コーチンでも冷凍は論外、いい味のする新鮮なものはかなり高価なものです。
高価な材料をふんだんに使ってみそ煮込を仕上げる、
それはおいしいかもしれない、しかし、私の作りたいみそ煮込みではありません。
売り値が釣り合わなくなってしまいます。
角丸は高級料亭ではないのです。
それに、高価な材料だけが美味しいわけではありません。
手間を惜しまず、一生懸命探せば、安くても美味しいものはたくさんあります。
例えば、角丸では、朝挽きの新鮮な鶏を使用しています。
ブランド鶏ではありませんが、私が食べて納得するものを使っています。
下手なコーチンよりはいい味です。
海老もそう。
寿司屋で使う、高級海老を仕入れましたが、私は納得できなかった。
仕入れ業者に持ってきてもらった海老は数知れません。
その中から、一番気に入ったものを採用しています。
(かしわも海老も、採算を考えると儲けの薄い商品になってしまいましたが)
ブランドにこだわらない。
あくまで中身勝負で。
安全でおいしいものを、手頃な値段でおなか一杯、食べていただきたい。
そういう意味で、角丸は「こだわりの店」ではありません。
が、当り前のことを当り前にやるうどん屋ではありつづけようと思います。
手打といううどんの製法があります。
文字通り、機械を使わず、手で粉をこね、延ばし、切って、麺をこしらえるやり方です。
この技術は、昔は当り前のものでしたが、今では希少なものになってしまいました。
ところが、街には「手打」の文字が多く目に付きます。
駅の立ち食いの蕎麦屋さんの暖簾にもこの文字を見かけて「?」と思うこともあります。
角丸では、蕎麦、きしめん、夏場の冷麦、この三点は完全手打で提供しています。
粉から完成までまったく機械をつかいません。
煮込みの麺、うどんの一部は切るところで機械を使います。
量がさばけないのが理由の一つです。
機械でも手抜きせずに私が打っているので、
やましいところなく公言できます。
手打という文句を店内にあまり出したくないと思っています。
(このHPには多く出てきますが)
変な先入観なしで、うまい、まずいを判定してほしいのです。
グルメブームの悪弊で、
「有機野菜」とか「手作り」「こだわり」という文字に弱い人が増えたように思います。
蕎麦でもそうです。
「つなぎが何割か、書いてくれ」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、
蕎麦を味わうのに余計なことです。わかる人は食べたらわかります。
食べ物は「うまい」か「まずい」か、口に合うか合わないか、ということです。
「手打」だからうまい、「機械」だからまずい、そんなことはありません。
手打にも、うまい手打とまずい手打があります。
うどん屋は、技術を食べてもらうのではありません。
完成品を食べてもらえばいいだけの話で、
こしらえるのに費やした苦労までお客さんに背負い込んでほしくはありません。
注・メニューで唯一、「手打冷麦」と言う表記があります。
これは手打を誇示したいのではなく、
稀に、乾麺の冷麦が好きだとおっしゃるお客様がいらっしゃいますので、
そういったお客様が判別できるようにそう表記したまでです。
マスコミ各位に特に申し上げたいことです。
角丸を取り上げてくださるのはありがたいことですが、
自分の記事や番組にプライドを持ってほしいと思います。
食べもしないで記事を書く方って意外と多いのです。
何を聞いていたんだろう、と首を傾げたくなる記事を書く人もいます。
「ご主人お勧めのものを載せますけど、何にしましょう」と聞く、
論外の方もいらっしゃいます。
角丸のみそ煮込みを載せたい、これは外せない、と思っていただければ、光栄です。
しっかり味わって、どんな味か、記事にしてほしいものです。
現在、雑誌・テレビ取材に関しては、
時間など、こちらからの条件・制約を承諾してくださる場合に限り、
お受けすることにしております。
もちろん、テレビでも雑誌でも、
いい取材をしてくださった方も多くいらっしゃいます。
このHPで軽薄なマスコミを批判してから、
これが防波堤の役割を果たしたのか、
ひどい取材は(以前に比べれば)減りました。
しっかりした取材をしていただくと、嬉しく光栄な気分になります。
しっかりした取材とは、責任とプライドを持った取材です。
そういう方に評価され、取り上げられるうどん屋でありたいとは思います。
お客様にお願い
いつからでしょうか、最近特に若いお客様に多いのですが、複数名で一つのご注文をされることがあります。
雑誌片手の方が多いところを見ると、おそらく食べ歩きをしていらっしゃるのだと思います。
一つの店で、お腹一杯にしてしまいたくないのでしょうね。
そのお気持ちは分かりますが、角丸では、お一人様一品のご注文をいただくよう、お願いすることに致しました。
理由は大きくふたつあります。
まず、商売上の理由ですね。
表に並んでいらっしゃる中、テーブルを占拠された上、一品しかいただけないのでは困ってしまいます。
角丸は薄利多売で、お値打ちに提供している自負がありますので、ご了解願いたいと思います。
次に、みそ煮込みを味わっていただくなら、一品をおひとりで食べていただかないと、
味を本当に理解していただけないと思うからです。
私は常々、「一口で旨いものは、本当に旨いものではない」と思っています。
食べ進むうちに止まらなくなるものこそ、美味しいもの。
みそ煮込みという料理は、一口めと最後とでは、味が変化していきます。
だんだん麺に水分が吸収され、麺はスープとの一体感が増しますし、スープにもコクが出ます。
これは、ラーメンやうどんとは違う、みそ煮込みの特性だと思っています。
4〜5名で一斉に取り皿に取り分けてしまっては、みそ煮込みの真価は味わっていただけません。
もちろん、小さなお子様をお連れの方に、子供もひとり一品とは申し上げません。
何卒趣旨をご理解いただき、ご協力のほどをお願いいたします。
美味しいうどんを作るために必要なもの、
まず、当然技術が必要です。
しかし、技術があればいいものを売れるかというと、そうではありません。
細かいこと、面倒なことを惜しまないことも重要です。
そして、もう一つ、素材も重要な要素です。
蕎麦粉を手挽きしていらっしゃる方でも、
蕎麦の栽培まではやっていらっしゃらないと思います。
小麦粉はもちろん業者に持ってきてもらうものです。
ねぎ、鶏、削り節…
吟味するのは我々ですが、業者無くして商売は成り立ちません。
業者さんに私が望むこと。
「言い訳をしないで欲しい」
我々はお客さんに言い訳できません。
気に入らなければ、二度とお越しいただけないだけの話です。
次はありません。
業者さんにもそういう厳しい思いで納品していただきたく存じます。
また、こちらからクレームをつけた際、
「これは○○産の××ブランドですから」という言い訳も要りません。
どんなブランドがついていようが、私が食べて気に入らないものはダメなのです。
いい商品を安い値段で、安定した品質で納品するのが業者の務めです。
言い訳は要りません。
「提案できる知識を身につけて欲しい」
世の中は常に動いています。
今でこそ、それなりにお客様に評価していただいている角丸も、
明日競争に敗れるかも知れません。
美味しい店という評価をキープするには、味をキープしていてはダメだと思います。
回りの店がレヴェルアップすれば、相対的に自分の店の味が落ちたのと同じことです。
常に今よりいいものを目指して行く、
業者さんも同じような考えを持ち、新たな商品をご提案いただければ、
それはきっと双方にプラスになることと思います。
まだ角丸とお付き合いのない業者の方でも、プレゼン大歓迎です。
私はいただいたサンプルは、必ずすぐにテストします。
そして、私の意見を明確にお伝えします。
現在お付き合いのある業者さんより、品質がいいとか、
品質が同程度で価格が安いとか、
メリットがあれば乗換えを検討します。
事実、これまでもそうしてきました。
シビアなようですが、我々も競争の最前線にいるのです。
業者さんだけが、十年一日で、言い訳ありでやっていけるはずがありません。
良心的な業者さんは、我々の宝です。
ながく付き合えるいい業者さんの助けを借りて、
もっともっといいものを追求したいと思います。
えらそうなことを長々と書いてしまいました。
お付き合いくださりありがとうございます。
お店は忙しく、ご相席をお願いしたり、お待たせすることがあったり、
充分なサービスができていないことも多々あると思います。
しかし、味に勝るサービスはない、という信念を持って、
「いらっしゃいませ、ありがとうございます、またお越しください」と、
私の声が届かなくとも、
うどんがそう語るような麺をお出しし続けたいと思っております。
ご賞味くださり、気に入ってくださればこれほどうれしいことはありません。
三代目角丸 日比野宏紀